界面捕捉法の比較:VOF vs Level Set vs Diffuse Interface
圧縮性多相流における界面追跡の主要な3つの手法について、原理、長所・短所、および適用例を比較します。
界面をどのように扱うか#
圧縮性多相流シミュレーションにおいて、最も根本的な問いの一つは 「二つの流体間の界面 (interface) を数値的にどのように表現するか」です。
大きく分けて三つの系統の方法が存在します。
- Volume of Fluid (VOF)
- Level Set
- Diffuse Interface (拡散界面)
1. Volume of Fluid (VOF)#
原理#
各セルにおいて特定の流体が占める 体積分率 (volume fraction) を追跡します。
であればそのセルは流体Aで満たされており、 であれば流体B、 であれば界面がセル内部を通過していることを意味します。
界面再構成 (Interface Reconstruction)#
VOFの核心は、 の値からセル内部の界面位置を再構成することにあります。
- SLIC (Simple Line Interface Calculation): 界面を座標軸に平行に近似します。
- PLIC (Piecewise Linear Interface Calculation): 界面を任意の傾きの直線として近似します。
PLICにおいて界面の法線ベクトル は、 フィールドの勾配から推定されます。
長所と短所#
- 長所: 質量が正確に保存されます(保存型)。
- 短所: 界面再構成が複雑で計算コストが高いです。3Dへの拡張が難しく、曲率の計算が不正確になりがちです。
2. Level Set Method#
原理#
界面を 符号付き距離関数 (signed distance function) のゼロ等値面として定義します。
- : 流体A
- : 流体B
- : 界面
再初期化 (Re-initialization)#
移流 (advection) の過程で、 は符号付き距離関数の性質 () を失っていきます。 これを復元するために、再初期化方程式を解きます。
ここで は仮想時間 (pseudo-time) です。
曲率と表面張力#
Level Setの大きな利点は、幾何学的な量の計算が自然に行えることです。
表面張力はCSF (Continuum Surface Force) モデルによって体積力へと変換されます。
長所と短所#
- 長所: 曲率や法線の計算が容易です。トポロジーの変化 (topology change) を自然に扱えます。
- 短所: 質量保存に失敗します。再初期化の過程で界面の位置が移動する可能性があります。
CLSVOF: 二つの手法の結合#
VOFの質量保存性とLevel Setの幾何学的な利点を組み合わせた Coupled Level Set and VOF (CLSVOF) 法が広く用いられています。
3. Diffuse Interface Method (拡散界面)#
哲学の転換#
これまでの二つの手法が界面を 鋭い (sharp) ものとして捉えるのに対し、拡散界面法は界面が本質的に 有限の厚み を持つものと考えます。
このアプローチでは、別途界面追跡方程式を必要とせず、体積分率が保存則システムの一部として組み込まれます。
5-equation Model (Allaire et al., 2002; Kapila et al., 2001)#
最も広く使われている低次モデル (reduced model) です。
最後の方程式が重要です。 の移流方程式が 非保存型 (non-conservative) である点です。 これがまさに界面における 圧力振動を防止する 鍵となります。
なぜ非保存型が必要なのか?#
を保存型で解くと以下のようになります。
右辺の 項が離散化の過程で適切に処理されないと、EOSの混合による非物理的な圧力振動が発生します。
非保存型の移流は、 を界面でシャープに維持しつつ、圧力と速度の平衡を満足させます。
7-equation Model (Baer-Nunziato type)#
各相が 独立した圧力と速度 を持つことができる完全非平衡モデルです。
緩和 (relaxation) 過程を通じて圧力と速度の平衡へと収束させます。 数学的に最も完全ですが、計算コストは高いです。
比較のまとめ#
| 手法 | 質量保存 | 界面の鮮明度 | トポロジー変化 | 実装の複雑さ | 圧縮性への適合度 |
|---|---|---|---|---|---|
| VOF (PLIC) | O | 高い | 困難 | 高い | 普通 |
| Level Set | X | 高い | 自然 | 普通 | 普通 |
| CLSVOF | O | 高い | 自然 | 非常に高い | 普通 |
| 5-eq Diffuse | O | 普通 | 自然 | 低い | 非常に良い |
| 7-eq Diffuse | O | 普通 | 自然 | 高い | 非常に良い |
結論#
圧縮性多相流においては、Diffuse Interface (特に 5-equation model) が最も自然で堅牢 (robust) な選択肢です。 衝撃波と界面の相互作用、キャビテーション、水中爆発などの問題において卓越した性能を発揮します。
次の記事では、これらの手法を実際にコードで実装する方法について解説します。
VOF / Level Set / Diffuse を切り替えて同じ円形界面の表現の違いを比較。
같은 원을 세 방법이 어떻게 표현하는지 비교 — VOF는 셀 평균, Level Set는 부호거리, Diffuse는 매끄러운 전이.
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